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アルコール依存症

アルコール依存症ってどんな状態?専門医療機関とは?治療方法を解説

アルコール依存症は飲酒が原因で心身の健康を損なう病気です。一般的なイメージは「昼間から酒を大量に飲んで暴れる」などでしょうか?実はそれだけではなく「飲むつもりじゃなかったのについ飲んでしまう」「一杯だけのつもりがつい飲みすぎてしまう」……そんな多くの人が思い当たるような状態でも、もしかしたら依存症かもしれません。

アルコール依存症とは、飲酒をコントロールできない状態

アルコール依存症は「アルコールを繰り返し多量に摂取した結果、アルコールに対し依存を形成し、生体の精神的および身体的機能が持続的あるいは慢性的に障害されている状態」(厚生労働省)と定義されています。アルコール依存症はお酒をたくさん飲んでいるかだけの問題ではなく、飲酒をコントロールできているかも含めた問題だということです。そのため、明らかな問題行動がなくても、飲酒をコントロールできていなければ依存状態だと考えてほしいのです。習慣的な飲酒から依存症に至るまでの期間は10~20年程度で、働き盛りの年齢にも多い病気です。

アルコール依存症を放置すると……

アルコール依存症を放置すると、肝臓に障害が生じるのはよく知られています。肝臓だけでなく脳・心臓・腎臓にも障害が生じますし、生活習慣病やがんとも強く関連があります。また、精神面でも、うつ病や睡眠障害の原因になったり、家族関係や社会生活に負の影響が出たりします。
このようにさまざまな問題を生じるアルコール依存症ですが、国内で患者数が110万人以上と言われているなかで、十分な治療を受けているのはごく一部です。

アルコール性肝疾患のおそろしさ

アルコールを摂取すると、肝臓でアセトアルデヒドという物質に分解され、さらに害のない酢酸に変えられます。これを担うのが肝臓の細胞(肝細胞)であり、習慣的な飲酒は肝細胞にとって負担になります。
また、アルコールの摂取で合成される中性脂肪を受け止めるのも肝細胞です。そのため、アルコールを過剰摂取すると脂肪肝という状態になってしまいます。これは禁酒で元に戻すことができますが、それでもやめないとアルコール性肝炎を経て、肝硬変症の状態になります。こうなると肝臓は硬くなって細胞の機能を失っており、回復は困難です。腹水がたまりお腹が大きく苦しくなったり、消化管から出血したりします。脳の働きにも影響する有害物質を分解することができず、肝性脳症(興奮・痙攣・昏睡を来す)になります。健康な生活や寿命が奪われてしまいます。

リンク|アルコール性肝疾患

簡易診断テストをやってみましょう

病院では、問診による症状や事象の評価に基づいてアルコール依存症を診断しています。基準には世界保健機構(WHO)の診断基準などが用いられ、飲酒の欲望・離脱症状・生活への影響などをもとに詳細に判断します。
また、医師の判断の前に、ご自身やご家族がチェックできる簡易的な診断テスト(CAGEテスト)もあって有用です。これに2項目以上あてはまる場合、アルコール依存症の可能性があるため受診が必要です。これはスクリーニング(簡単な拾い上げ)なので、正確な判断は病院でおこないます。

①飲酒量を減らさなければと感じたことがありますか?(Cut Down)
②人から飲酒を非難されて気に障ったことがありますか?(Annoyed by criticism)
③自分の飲酒に後ろめたさを感じたことがありますか?(Guilty feeling)
④神経を落ち着かせたり、二日酔いを治したりするために迎え酒をしたことがありますか?(Eye-opener)

治療がむずかしいのはどうして?

アルコール依存症を治療するのは簡単ではありません。心理的・身体的に依存してしまい、飲まなければすむという状態ではなくなってしまうからです。こうなると患者さんが社会的な生活を送るのは難しく、経済状態が悪化して場合によっては犯罪に関与してしまうなど、患者さんを支える家族も大きな苦労を強いられます。この結果、患者さんが孤立してしまうこともあり、さらに治療は難しくなります。

  • 心理的な依存

    心理的依存は「アルコールがあると幸福、なくなるとつらくて不安な気持ちになる」という状態です。家族や社会生活の問題が生じてストレスを感じるとさらにアルコールに頼る機会が増え、依存は悪循環に入ります。

  • 身体的な依存

    身体的依存は、アルコールの禁断症状が出るような状態です。具体的には身体のふるえや不眠、吐き気のほか、重いものでは幻覚も生じます。意思の強さに頼るような断酒は成功しません。

治療方法について

アルコール依存症の治療は、適切な医療機関で多面的に行う必要があります。①薬物治療②認知行動療法プログラム③内科的治療などがあり、それぞれについて以下にまとめているので、ぜひ読んでみてください。ほかには、精神科でカウンセリングやリハビリテーションを受けるのも有効です。
依存症は個人だけでは解決できません。患者同士で情報共有・相互支援する自助グループへの参加などもおすすめします。また、断酒を支える家族が、医療機関などで相談できる環境も必要です。

治療方法

薬物治療について

薬物治療には、身体症状を抑えたり、睡眠の質を上げたりするものがあります。また、飲酒を避ける目的の処方も可能です。たとえば①断酒補助薬(アカンプロサート)②抗酒薬(ジスルフィラムやシアナミド)③飲酒量低減薬(ナルメフェン)があり、これらを内服して治療します。このうち③飲酒低減薬は、必ずしもアルコール飲用をとめなくても、飲用による健康面・精神面・社会面での悪影響を減らすという「ハームリダクション」の観点から選ばれることがあります。

治療方法

認知行動療法プログラム

薬物治療とともに治療の柱になるのが認知行動療法プログラムです。代表的なものにGTMACKSMARPPがあります。どちらも集団治療プログラムですがマンツーマンで行うこともでき、当院では入院治療にGTMACK・外来通院でSMARPPを主に使用しています。たとえば、SMARPPでは専門家とセッション(週に1回、計24回のセッション)を行います。「アルコールや依存症を理解する」「飲酒の引き金を自覚する」「アルコールのない生活スケジュールを考える」などを学習し、実践できるようにします。
こうしたプログラムを通して、患者さんが治療者と共にこれまでを振り返り、今後どうしたらいいかを一緒に考えていきます。

治療方法

内科的治療について

アルコール依存症と診断された時点で多くの人は肝臓の機能低下をはじめとした複数の内科疾患を抱えていますが、健診を受けていないと気付いていないことがほとんどです。依存症の治療は長期間になるため、その途中で身体疾患が悪化して救急搬送される例も多く見られます。精神科的治療が中心になりますが、治療開始時・治療中も定期的に内科診察が必要です。
大平下病院は総合内科医の外来も併設しているので、精神科と内科をあわせて受診いただけます。身体診察のほか、右のような検査で全身の状態を確認します。アルコール依存症の治療中は他の内科病院を受診するハードルが高いという患者さんも多いですが、そのような方も身体疾患の悪化を防げます。

大平下病院は専門医療機関に指定されています

アルコール依存症は専門的な診療や相談が必要なため、厚生労働省の選定指針に基づいて各都道府県が専門医療機関を指定しています。当院はその指定を受け、精神科医・看護師・栄養士・精神保健福祉士などの多職種が協力して治療にあたっています。具体的な取り組みとして、アルコール使用障害治療プログラムの提供、アルコホーリクス・アノニマス(AA)や断酒会といった自助グループの紹介、ご家族などへの情報提供をおこなっています。入院施設を有していることから、一定期間の断酒を支え、そのあいだに集団治療プログラムに沿った治療を受けることができます。治療の中には退院後も治療を継続しながら社会生活に復帰できるようにカウンセリングや栄養指導が含まれています。内科診療で合併症の治療も受け、心身ともに健康な状態を目指します。

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